弌矢コード

挿絵に負けたくないです。

organisms

 真夏の休日に汗して二〇時間眠るとは何事だ。ひとりごちて昼間の部屋の空を蹴る。起き抜けにもう一度イージーな酔いを決め込んでも構わぬほどだと身をもたげ、四時間を過ごすため暗幕で部屋を閉じて黒い窓辺に座り込んだ。
 机の上の物珍しさを見やる。私が昼間というものを毛嫌いしている事を承知の友人がくれたランプに点火した。部屋が仄暗い七色に色づく。暗幕で部屋を閉じて一歩も出ないでいる昼間にページをめくり色彩豊かなウィリアム・クラインの写真集を眺めている。判った眼でどんな写真だと、またひとりごちた。
 部屋は暗いが漏れ入る音が昼間でやりきれない私は妖艶なエレクトロニカを廻した。テクノかも知れなかった。ハウスかも知れない。まだ騒音がしている。ヘリコプターだろうとシャッターを閉じた私は空腹に気づき、立ち上がって陰るキッチンでひとり不機嫌なまま好物のデーツをこんな味だったろうかと囓り舐めた。
 廻している音が終わった。次いで外音が侵入してくる。上空を巡回する警察のヘリコプターに決まっている。眩暈がする。この真夏の昼間から私は、あのクラブミュージックの箱に行こうか。リーガル、イリーガル、イージーなドラッグの酔いに充ちた箱だが眩暈にも都合が良い。
 ベッドに再度入り頭を抱え込む。ごくりと喉が鳴る。外も内も闇が昇る時刻に成っている。迫り来る出社の瞬間に一度、塊の支度をするのだ。このまま眠らず無機物なスーツに囲われて運ばれ皆と一斉に無機物に成り果てるのだ。そして太陽に対する復讐の月をしばたく眼で禁断しつつ待ち望み躍動する肉体を与えられるのはまだかと当て込んで延々と動作するこの私もまた薬物依存者ではないのか。
 疲れてもいた。沈みを決め込んで眠りすぎていた。動けない。まだ動いていない。シャッターが音を立て始めた。暗闇を染めるランプの灯火が強くなっている。瞳に飛び入り迫りくればいい。部屋が七色に放火された模様で、事実なら良いのだとアクシデントをさえ味わえなければ暮らしさえ危ういとは一体に私は何事か。──

 台風がくる様だった。国営放送のBGMを排除して灯りだけは許し、アップジョンを使う程度には寝返りを打てる事を確認した。そのうちエアコンを凍えるほど下げる事もできたし寒さも感じていた。眠れずこのままふらつきながら今日が始まる。
 配達員がベルを鳴らした。そうだった、これからイージーな快楽だけを手にして日中から夜通し不眠での装備を命懸けでするのだった。摩耗すら嬉々として引き受けて瞳孔をも開き切り今からこの部屋より内へ向け色彩豊かに変容させてやるのだと。
 扉へ向かう。
──何も問わせないが何も問われない皆同様だ。
 七色で、ランプが用無しと成る。
 内に血潮が溢れる。
 落ちろ、昇れ、どのみち結構だ。
 外もこれから全部荒れ果てる。