弌矢コード

挿絵に負けたくないです。

夜に

ラジオの音がして寝椅子から身をもたげると、日付が変わっている。
DJは不在で、印象派が流れている。
眠っているあいだ、亡き王女のための行列舞踊に附き合わされていた。
この起き抜けの今夜に似つかわしくない音楽の様な気がして、首をひねる。
夜色の窓に乏しい星の灯りがあった。
ラジオが消えたから、自力でラウンド・アバウト・ミッドナイトをかけると、コンビニにでも出かけたい気分になって、玄関まで数十歩、けれども、煙草も酒もつまみもあり余っていることに思い当たり、だからといって呑む気もせず、また寝椅子に躰を沈める。
レコードが回転を終えた。
時計の秒針と指先を合わせてみてやめる。
することがない。
することがないことをしている。
そうして静けさが極まりかけると、何事ぞ今夜、と思い至って極まらなくなった。
こうしてはいられない。そう誰かの幻の声に耳を傾ける。
この夜に、何かをしろと、世の中が、命令しないから。
新月の箇所の暗闇に目をこらす。
そのうち鋭利な月となるまで何十時間も起きていようか。
まるで夜の番犬みたいだ。