弌矢コード

挿絵に負けたくないです。

ときめくまえに。

地球の焦げる匂いがするの。
セックスの最中、私がそういうと、恋人は首を傾けた。
またかい? それとも最終戦争のお話かい?
確かに私はマリファナアレルギー性鼻炎だし、量産型破滅系女子だけれども。
するの、地球の焦げる匂いが。
バッドか・・・・・・死にたがってたもんな。
赤い目をした恋人は勘違いをしている。
死にたくなるときのセックスほどいいものはない、
キメセクなんかぶっ飛ぶほど断トツ。
ふだんから私は恋人を軽蔑しているから、それはいいとして、とにかく、
地球の焦げる匂いがした。 

そんな匂い、何で知っているのだろう。
キラウエア火山の記憶だろうか。
違う。
地中の匂いではなかった。
まん丸い地球の表面が焦げる匂い。
私は地球の焦げる匂いでオルガズムに達した。
恋人が得意げに、日に焼けた顔面を見せつけている様だった。
地球って焦げたらこんな匂いがするのだろうか。
きっと私は病気なのだ。週末の約束を破って、ひとりで病院へ行こう。
なんだかわくわくしてきた。 

幻臭ではなかった。知らない匂いを幻に感じることはないと、当たりまえの診断。
それでもいまだ、わくわく感をひたすら抑えながらいる。
次の週末も変わらない感覚が続いていた。
東京プラットフォーム。
真昼の白い月があった。
そんなのどうでもよかった。
円周率の夢でも見ていろ、と叫ぼうとしてやめた。
電線が波打つのを目でたどりゆられて、
降り立った。 

汚れた街は知らんぷり。
タップする。
ヘッドフォンから愛らしいメンヘラジョニ・ミッチェルが歌い出すと、
私に向かって花々が咲いてくる。
山脈が見える。
海が見える。
七色のフィルムの光景、
瞬きをがまんしている。
分かってきたから。
あの時代の匂いに違いない。  
通院やめた。
 化粧室の鏡に映る、内面のないフォークロアな私、
自傷行為に興味がある。
オーバードーズに興味をもった。
いまどきそんな。

空中を、かげろうが浮かび上がる。
真夏の焚き火を、黒い恋人と見つめている。
カップルという親和力に囲われているらしい。
焦げくさいな、無機物が。
黒い恋人が汗を吹き出している。
タップする。
音からの匂い。
フラワーの波、私は時間を超えて、地球の焦げる匂いを探るのだ。
黒い恋人が踊り出した。