弌矢コード

挿絵に負けたくないです。

夕暮れの歌舞伎町から振り向くと、
出勤タイムの女性たちの波が寄せてくる。
左右に別けてぼくを通り過ぎていく。

女たちに支えられている街がある。
笑いと涙、
地獄と享楽に支えられている、
素敵な街がある。

光っている磁場、
彼女たちにぼくらは支えられている、
そんな場所がこの国にもある。

不思議なのはそれが、
ぼくに懐かしさを与えてくれる事だ。

女性たちよ、
ぼくの母もまた女性だった。
笑いと涙に煉獄享楽、
母もそれを与えてくれていた。
父親不在の思い出のなかで。

ぼくが夫だったなら、
相手に何を与えよう。
ぼくが父親だったなら、
子供に何を与えよう。

ぼくは歌舞伎町の入り口で、
夕日の色にシャツを染め、
これから我が家に帰らなければならない。

もうすぐ夜が降ってくる。

エクリチュールだ、あっかんべー

このブログのおかげで、女性と別れる羽目になりました。

どうして、作品と作者を同一視するんですかね。

一体に、いつの時代の人なんでしょうか。

ぼくはブログに書いた作品の様な人物ではありません。

古い考えの人、

現代思想でも読んだらいかがでしょうか。

日本の私小説の因習は根強いですね。

 

というわけで、ブログを休んでいました。

本腰をいれている書物で忙しいのですが、

また更新しようと思っています。

エクリチュールと作者を同一視する古い考え、感覚しかもっていない人とは

これからもぼくは戦っていく所存です。もしくは相手をしない。

あ、ぼく、お涙頂戴の作為にみちたお話は書きませんからね。

媚びませんから。

では。 

 

LOVERS

 ひとしなみな男は暮れかけた海岸でのフェスに紛れながら女たちばかりを眺めていた。皆、恋愛や電子音楽を求め集まり乗り踊っている。ブースの小さなDJが巨大なスクリーンに映されては炸裂する花火とともに絶叫が湧き上がる。
──異性に決して強くない。
 呟く様に男がそう思う。音の色に乗ってはいたが、男は華やかな音とともに戯れる女たちを眺め、次第に観察へと入っていった。
 目と目は合っていた。炎熱の夜のステージ前、女は光線に青く赤くちらつきながら染まっている。焦がれる様な見目形だった。一目惚れをしたのは初めてだったし声をかける必要はない積極的な女だった。激しくかき鳴らされる曲、地中海の舞踏をホテルで聴きたいと女は笑顔を明滅させた。海の望める建物だという。
 甘みある匂いに充たされながら男は緩やかにカーブを描く川沿いから左折して駐まった。レトロな色彩ある草花の彫刻が施してある扉を開いてベルガールから鍵を受け取り、シャンデリアの下の装飾の誇張されたラウンジを抜けて黄金色に蛇行する回廊を踏んだ。女の味は赤いリップクリームで、男の味はチューインガムだった。ドアを開けて部屋に入り、暗く透き通るステンドグラスの下のソファにふたりは座って地中海の舞踏をかけた。
 幾度と知れず聴いているフラメンコギターだった。けれども男にはアル・ディ・メオラの音は好みでありつつも粗雑に聴こえる。女に慣れているつもりの男は目を閉じてパコ・デ・ルシアの音だけに意識を向けた。
 目をつむっている男の横で女は立ち上がって後ろへ廻り、当たり前の様に首に腕を廻し抱く。ギターが絡み合い終えて次の曲、黒い森へ移ってから、タイミングに満足した女は音をかけたままバスルームへ男を誘った。
 バスタブにふたり浸り、向かい合っている。バスルームは開け放たれている。観客の歓声と笑い声が聴こえてきたとき、ふたりも笑った。フェスでサンプリングされていた部分だったから。
 ふたりは湯をかけ合ってじゃれた。戯れているふたりには見えない部屋の窓の外で夜の海辺は静かに黒く濁っていて、左から右へ客船が徐行している。その海路を右に入るとホテルの脇を流れる泥の川、その脇にアールヌーヴォー調の湾曲したラウンジへの入り口はある。ラウンジでベルが鳴って、カップルにこなれたベルガールが、銀の皿を手のひらの上に乗せて運んでいく。ベルガールはシャンデリアの回廊を身をよじらせて歩み抜けて、ドアの前に立った。室内では最後の曲、ガーディアンエンジェルが充ちて、テラスへ開いた窓を抜けて流れ出ていた。テラスの右手から川から海へと注ぎ込まれていく水音が籠もる様に鳴り響いた。窓辺に立つ全裸の男と女はドアの音を耳にして振り返った。
 ふたりの裸体からたゆたう蒸気は湯からのものなのか、汗からのものなのか、分からないほどだった。そのまま抱擁からセックスへ時間は引き継がれていく気配を察知したベルガールは飲み物を置いて踵を返しドアを出た。
 男は音楽を聴きながらセックスをしたことがなかった。ほとんどありがちにAVの映像を垂れ流しながらだった。お気に入り女優はいない。男は女のセレクトした曲により、過剰な情熱を自分に向けている事を察していた。この女に限っては音楽を許容する広さがあることを男は見抜いているつもりでもいた。
 女の方がAVを点けた。レズビアンたちが浮かび上がる。女は振動するクンニリングスの音が好みだった。毎晩聴いてひとりでしていた。男はと言えば、セックスの只中で愛していると言わせるのがたまらなく好きでいたが、今回ばかりは本気で相手を激しく愛で、女に愛していると言わせた。音はループし続けて地中海の舞踏へ戻ってから次の曲へ入った。フェスの終わりの花火の連続する紫の光が暗い窓辺から漏れてくる。
──あなたも愛している? 
 男が無論頷く。行為は情熱を孕んで絶頂を迎え、ふたりは同時に果てる事が出来た様だった。男はオルガズムに達し仰向けになった後でも持続して女を好きでたまらないでいる自分に驚いていた。女の方は上気の宿りを放出させて悦に浸っていたが、やがて立ち上がり、横になっている男の腕を引っ張り立たせた。
 果てたばかりのふたりが踊り出す。燃え上がるギターの音と戯れながら延々と踊り続けた。女は男を愛し、男は女の肩を愛でながら撫で下ろして、愛に叶うほど強くなれるかどうかと呟いた。聴き取った女が笑いを漏らす。
──真中でさえ愛は無理とは言わないで。
 ふたりが眠りについている間、ラウンジでベルガールは目覚ましの予定を終えた。恋愛へ溶け合うフェス帰りの客たちのデータを始末しながら、隣の同僚の女に、あの部屋にいた全裸のカップルの男性がとても好みだと呟いた。
 ベルガールは恋愛をこちらへ抱かせてしまうほどの性交を客室で何度も目撃している。けれども、さっきの彼が本当の好みだと深く感じた。ここまで本気で恋愛の感情を抱いたのはなかったほどに残念な気持ちが充ちた。愛する事はできるのかも知れない。燃える炎もし青となれば。けれどもベルガールには赤すぎた。
 朝焼けに、男と女は起きてテラスへ出た。海辺を通る舷窓から観光客がホテルを眺めている老いた男女がいた。ふたりは黙って携帯電話で写真を撮った。舷窓のなかでうごめく老いた男女が暑そうに海を眺めている。船内で銀髪の下の汗を拭きながら眺めている老人の視線が凝視になっていく。
──いや、あれはラブホテルじゃないのかい。
──違うようですね、曲線がエロティックで凝りすぎていますもの。
──しかし横の川の汚れは酷いものだね。
──ヴェニスもそうだったじゃあないですか。
 受け答えする老いたふたりも彼女彼らと同様、汚れくすんだボラの跳ねるのを撮ったりしていた。
 フラメンコギターは夜から流れ続けたままだった。朝のコールが鳴って、女の方が先に部屋へ戻った。

つぶやき

 

 

いま、数百枚くらいのものを書いているのですが、描写が全く書けず筆が進む様子を見せません。千手観音だったらなあ・・・・・・

と空想してみて自分で苦笑してみたところで、

唐突ですが、何かを懸命に作ったのに批判されたとき、

「だったら、あんたが作ってみろよ」

とか言ってしまう人は作り手失格ですからとっとと表現など止めましょうさようなら。

とかなんとかついついツイッターなどに垂れ流してしまったのは、

あまりにそういう愚鈍者どもが多かったからつい。

だって作り手と受け手の関係性をすら感じ取れない気の毒なのが本当に多いんですよ!

翻って最近、音楽ばかりを聴いては友人たちに手紙を書いています。

千手観音だったらなあ。

空想です。

 

フライヤー

前略

夏フェスの季節でもありますね。
踊り狂う人々盆踊りの如し、はつらつと綺羅びやかで頼もしい限りです。
などと申し上げては誹りを受けかねるので付け加えるに、
盆踊りもぼくは大好きです。参加せずに傍観するが好みです。
なぜ盆踊りはくるくる廻るかご存知ですか? 
存じておられる方々すみません。

只今、大変暇なのですが、精神的に多忙で御座います。
しかしながら、執筆は続けておりますので、
近々、また拙い文を上げる所存であります。 

お読みになっていただいている方々、
感謝申し上げ続けて止むことなしで御座います。
土下座をでもしたいくらいです。
その膝に重き石を乗せられても構わないほど。
できれ年月をかけて成長する水晶とかがいいな。やめてね。

本当に感謝しております。無論こころより。
憂いも鬱もあるけれど、ぼくは呑気です!
それでは──

草々